★2021年8月1日★
全ての基盤は、おうちでのお手伝い
「自分で考えて、自分のことは自分でできる人に育ってほしい」お教室にいらっしゃる多くの保護者の皆さまからお聞きする言葉です。
幼児前期には意志通りに動く身体の基盤をつくり、後期には自分で考えて行動できる環境を整えたいですね。
今回は、そのために必要なことは「おうちでのお手伝い」に詰まっているというお話です。
自由に移動できるようになったころから、台所で遊びたがりますね。
戸棚からお鍋や容器を引っ張り出したり、台所しごとをしている大人の足元をうろうろとしたり・・・
どうして、こんなにも台所で遊びたがるのでしょうか?
大人が毎日せっせと活動している様子を見て育ってきた子にとって、台所しごとは憧れです。
大好きな人が長時間取り組んでいる、魅力的な活動ができる場所。「自分もできるようになりたい」という意欲が高まってきたからこそ、台所に吸い寄せられるのではないでしょうか。
そして、ちょろちょろされると危ないからと、台所には「立ち入り禁止令」を発令したくなる時期なのですが、このくらいが台所のお手伝いの始めどきです。台所しごとの役割を、少しずつ分けていきましょう。
レタスをちぎる、ミニトマトのヘタを取る、ジャガイモの皮を剥くなど、「サラダをつくる」ための準備となる活動の一部分から始めることをお勧めします。
本物のしごとに参画できると、自己コントロールが学べ、自己肯定感も高まります。
そうは言っても、大人のしごとはそれだけではありません。やらなければならないことは盛りだくさんです。そんな中、ちぎったレタスは飛び散り、ミニトマトのヘタは残っていて、ジャガイモの皮はまだらに向けている・・・お子さまが手伝ってくれた途端に、大人のしごとは倍増します。時間だってかかります。
自分がやった方が、圧倒的に早くて正確に仕上がります。
ついつい、「お手伝いは、もう少しできるようになってからにしよう」と思ってしまいますね。
もし、お子さまにお願いすることがストレスになるようでしたら、どうぞ無理はしないでください。
まずはできそうなところから、本当に少しずつでよいのです。
「できそうなところから少しずつ」お手伝いができる環境づくりを意識しているかどうかだけで、未来は劇的に変わってきます。
自分でやりたい!という意欲があるうちにチャレンジするチャンスを得られなかった子は、自分でチャレンジする術を見失ってしまいます。いつまで経っても、安心してお願いできるレベルまでできるタイミングはやってこないのです。
小学生になったら、もう「お手伝いをやりたい」なんて言ってくれません。やり方も分からないので、無理矢理やらせてみたところでできません。
お手伝いだけでなく、なにごとにも無気力で、誰かがやってくれるのを待つ未来が待っています。
それがもし、本当に「少しずつ」でもお手伝いをお願いしていたらどうでしょう。
例えば、お箸置きをテーブルに並べるだけをお願いしたとしましょう。最初はめちゃくちゃでも、大勢に影響はないですね。だから、これはその子のおしごとです。
色や形で持ち主が分かるようにしておけば、どれが誰のものかを認識できるようになるまでのプロセスに気づけます。置き場所や向きにも意識が向くようになったことにも気づけるでしょう。
そうやって、新しい活動のヒントが得られます。成長を感じることができます。
「幼児にお手伝いしてもらうには、大人が尻拭いしなければならないから大変!」なんて堅苦しく考えなくても大丈夫なのです。
幼児期のお子さまは、自分でできるようになるために「動き方を正確に学びたい」時期にあります。
これは、随意筋肉を意志通りに動かすことができる身体を獲得している「運動の敏感期」です。
この時期には知りたい動作の「動き方」をゆっくりとやって見せると、食い入るように見つめて模倣します(経験)。それを自分でもできると、「なるほど」と理解します。一度の成功では「本当にそう?」という問いが生まれ、もう一度確かめてみたくなります。そして、「やっぱりそうか!」と納得します。(判断)幼児期の場合、完全に自分の意志通りに動けるようになるまでは納得しません。だから、「もう一回!」と何度も何度も同じことを繰り返すのです。
この、経験→理解→判断のサイクルが「学ぶ」ということです。
市場には、幼児向けのドリルなどもあふれているので、3歳前後から文字や数などのドリルをやらせるご家庭も多いと思います。それが悪いということはありませんが、それはお子さま自身が本当に必要としていることなのでしょうか?
ドリルをやらせるよりも、やりたがるお手伝いに参画してもらうことの方が、「学び」になっているかもしれませんよ。