2021年8月 全ての基盤は、おうちでのお手伝い

「自分で考えて、自分のことは自分でできる人に育ってほしい」お教室にいらっしゃる多くの保護者の皆さまからお聞きする言葉です。
幼児前期には意志通りに動く身体の基盤をつくり、後期には自分で考えて行動できる環境を整えたいですね。
今回は、そのために必要なことは「おうちでのお手伝い」に詰まっているというお話です。

台所で遊びたがる子

自由に移動できるようになったころから、
台所で遊びたがりますね。

戸棚からお鍋や容器を引っ張り出したり、
台所しごとをしている大人の足元をうろうろとしたり・・・

どうして、こんなにも台所で遊びたがるのでしょうか?

大人が毎日
せっせと活動している様子を見て育ってきた子にとって、
台所しごとは憧れです。

大好きな人が長時間取り組んでいる、
魅力的な活動ができる場所。
「自分もできるようになりたい」
という意欲が高まってきたからこそ、
台所に吸い寄せられるのではないでしょうか。

そして、
ちょろちょろされると危ないからと、台所には
「立ち入り禁止令」を発令したくなる時期なのですが、
このくらいが台所のお手伝いの始めどきです。

台所しごとの役割を、少しずつ分けていきましょう。

レタスをちぎる、
ミニトマトのヘタを取る、
ジャガイモの皮を剥くなど、
「サラダをつくる」ための準備となる活動の一部分から始めることをお勧めします。

本物のしごとに参画できると、
自己コントロールが学べ、
自己肯定感も高まります。

大人にも都合はある

そうは言っても、
大人のしごとはそれだけではありません。
やらなければならないことは盛りだくさんです。

そんな中、
ちぎったレタスは飛び散り、
ミニトマトのヘタは残っていて、
ジャガイモの皮はまだらに向けている・・・

お子さまが手伝ってくれた途端に、
大人のしごとは倍増します。時間だってかかります。

自分がやった方が、圧倒的に早くて正確に仕上がります。
ついつい、
「お手伝いは、もう少しできるようになってからにしよう」
と思ってしまいますね。

もし、
お子さまにお願いすることが
ストレスになるようでしたら、
どうぞ無理はしないでください。

まずはできそうなところから、
本当に少しずつでよいのです。

できそうなところからでよい

「できそうなところから少しずつ」
お手伝いができる環境づくり
を意識しているかどうかだけで、
未来は劇的に変わってきます。

自分でやりたい!
という意欲があるうちに
チャレンジするチャンスを得られなかった子は、
自分でチャレンジする術を見失ってしまいます。

いつまで経っても、
安心してお願いできるレベルまでできるタイミングはやってこないのです。

小学生になったら、
もう「お手伝いをやりたい」なんて言ってくれません。

やり方も分からないので、
無理矢理やらせてみたところでできません。

お手伝いだけでなく、
なにごとにも無気力で、
誰かがやってくれるのを待つ未来が待っています。

それがもし、
本当に「少しずつ」でもお手伝いをお願いしていたらどうでしょう。

例えば、
お箸置きをテーブルに並べるだけをお願いしたとしましょう。
最初はめちゃくちゃでも、大勢に影響はないですね。

だから、これはその子のおしごとです。

色や形で持ち主が分かるようにしておけば、
どれが誰のものかを認識できるようになるまでのプロセスに気づけます。

置き場所や向きにも意識が向くようになったことにも気づけるでしょう。

そうやって、新しい活動のヒントが得られます。
成長を感じることができます。

「幼児にお手伝いしてもらうには、
 大人が尻拭いしなければならないから大変!」
なんて堅苦しく考えなくても大丈夫なのです。

動き方の獲得は「学び方を学ぶ」こと

幼児期のお子さまは、
自分でできるようになるために
「動き方を正確に学びたい」時期にあります。

これは、
随意筋肉を意志通りに動かすことができる身体を獲得している「運動の敏感期」です。

この時期には
知りたい動作の「動き方」をゆっくりとやって見せると、
食い入るように見つめて模倣します(経験)。

それを自分でもできると、
「なるほど」理解します。

一度の成功では
「本当にそう?」という問いが生まれ、
もう一度確かめてみたくなります。

そして、「やっぱりそうか!」と納得します。(判断

幼児期の場合、
完全に自分の意志通りに動けるようになるまでは納得しません。

だから、
「もう一回!」と何度も何度も同じことを繰り返すのです。

この、経験→理解→判断のサイクルが「学ぶ」ということです。

市場には、幼児向けのドリルなどもあふれているので、
3歳前後から
文字や数などのドリルをやらせるご家庭も多いと思います。

それが悪いということはありませんが、
それはお子さま自身が本当に必要としていることなのでしょうか?

ドリルをやらせるよりも、
やりたがるお手伝いに参画してもらうことの方が、
「学び」になっているかもしれませんよ。

プロフィール

ママヴィ 代表|桑原 眞理子

中堅から上場企業・中小メーカーまで多様な現場で
商品開発・マーケティング業務に従事。
「暮らしに寄り添う価値」を追求する中で、
子どもたちの柔軟で斬新な発想に触れたことをきっかけに、
「子どもの力を社会に届けたい」という思いが芽生え、
モンテッソーリ教育をびました。

現在は、「モンテッソーリ教室 マヴィのおうち」を拠点に、
子どもの“問い”を起点とした探究的な学びと、
地域や社会とつながる実践の場づくりに取り組んでいます。

五感をひらく暮らしの体験と、問いのある学びを組み合わせた「古民家留学」、
そして2025年夏より始動する「こどもMBA」などを通じて、
子どもたちの内発的な学びと社会参画の循環を育んでいます。
【資格・活動】
日本モンテッソーリ教育総合研究所認定 3-6歳教師
保育士
日本野菜ソムリエ協会認定 野菜ソムリエプロ

Montessori-based / Japan
Learning starts with “ん?” not “Aha!”

関連記事

PAGE TOP