2022年7月 子どもの「主体性」を育む環境づくりとは

教育現場で「主体性」を育むことの大切さが問われるようになり、そういった側面からもモンテッソーリ教育は注目されていますね。

物事の変化が早く、複雑で、不確実なことが多い世の中だからこそ、柔軟で、主体的にチャレンジできることが必要だと考えられています。子どもの主張に耳を傾け、子ども主体の学びを大切にしたいと考えたとき、「大人が子どもの言いなりになること」と混同して考えてしまうことはないでしょうか。

そこで、今回は「主体性を育む」ということについて整理してお話しいたします。

自分でできるようになりたい!

2歳前後くらいから「自分でする!」と、
自己主張するようになりますね。

運動の敏感期にある子どもたちは、
自分の身体を意志通りに動かすことに夢中です。
模倣期にある子どもたちは、
大人と同じようにできるようになりたくて、
一生懸命真似をします。

汚したり、壊したり、
思うように行かなくて癇癪を起こしたり・・・

大人にとって、
ストレス以外の何者でもない状況に陥ってしまうこともしばしばですよね。

よかれと思って手を差し伸べたばっかりに、
怒り出して手がつけられなくなってしまうこともあるくらい
「自分でできるようになりたい!」
というエネルギーに満ちています。

俗にいう「イヤイヤ期」とは、
このエネルギーをコントロールする術を学んでいる時期といえます。

この時期の「自分でやりたい!」という気持ちは、
主体的に生きる意欲に満ちています。

自己主張とわがまま

では、
「これがやりたい!」「あれが欲しい!」「こうしたい!」
といった欲求を全て通すことは、
「主体性を育む」ことにつながるでしょうか?

モンテッソーリ教育で大切にされているのは、
その子の発達課題を、
その子自身の力で達成できるようにサポートすること
です。

決して、なんでも好き勝手にさせるということではありません。

例えば、お箸やボールペンなど
細長いものに興味を持つお子さまは多いですね。

では、食べるためや、字を書くための
道具として興味を持っているのでしょうか?
持ち歩いたり、振り回したりするのであれば、
危険です。

「ならぬものは、ならぬ」
という経験から学ぶことも、大切に考えています。
だからこそ、
なぜダメなのかの理由を説明することも忘れてはなりませんね。

子どもがやりたがるからという理由で
好き勝手にさせることは、
良いこと・悪いことの判断基準を伝えるチャンスを逃してしまうことなのです。

幼児期は、社会性の基盤も獲得しています。
社会の一員として生きる上で必要な
善悪の判断基準を指標として、
自己主張なのか、わがままなのか
区別をするとよいのではないでしょうか。

子どもができることは自分でやる

では、目の前にいるこの子は、
今何ができて、何に難しさを感じていると思いますか?

モンテッソーリ教育では、
自分のことは自分でするのが基本
です。

もちろん、
最初は自分でできないことも多いので
サポートが必要なのですが、
その子が自分でできるようになったことには、
手を出さずに見守ることが大人の役割です。

最初は時間がかかります。
手を出したくなるくらい、
ものすごく時間がかかります。
それでも、
自分でやっていれば、
少しずつできることが増えていきます。

歩行が安定したら、
汗を拭くタオル、
小さな水筒、
替えのパンツなど、
自分のものは自分で持ち運べるように、
小さなリュックを用意してください。

お子さま自身とコミュニケーションを取りながら、
自分で持つことができる重さや形を一緒に模索することも大切です。

そうやって、
自分で管理する環境を整えていると、
自分のことは自分でするという意識も芽生えてきます。

そうはいっても、
眠かったり、環境が変わって不安になったり、
今までできていたはずのことができないということもありますね。

甘えたがる時には、
スキンシップを取って受け止めることも大切です。
そんなときも、
代わりにやってあげるのではなく、
できるだけ自分でできるようにサポートしたいですね。

待てる大人になるには

子どもの時間感覚は、大人と違ってゆっくりです。
その差は、8倍とも言われるほどです。
私たち大人が10秒で終わるような些細なことにも、
1分以上時間が必要なのは自然なこと。

一方で、
大人が目の前の結果を求めたくなるのも自然なことのようです。

ですから、
待つことは難しいというところからスタートしてはいかがでしょうか?

何かを獲得するお子さまと一緒に、
大人は待つことを学び、
お子さまと一緒に環境を整えていくのです。

モンテッソーリ教育は、生涯学び続けることを基本としています。

大人が主体的に学び続ける姿を見せることが、
環境づくりの醍醐味なのかもしれません。

プロフィール

ママヴィまなびのキ 代表|桑原 眞理子

1977年生まれ、東京都八王子市出身。
工学院大学 工学部 応用科学科卒。

企業での商品開発・マーケティングに17年間従事し、暮らしに寄り添う価値づくりを追求する中で、子どもたちの自由な発想と出会い、「子どもの力を社会に届けたい」と強く感じ、教育の道へ。
モンテッソーリ教育を学び、2019年より東京都府中市にてモンテッソーリ教室「マヴィのおうち」を主宰。保育士資格と実践経験を活かし、家庭教育支援と探究的な学びの場づくりを行ってきた。

現在は、「五感をひらく暮らし」と「問いを育む学び」をかけ合わせた「古民家留学こどもMBA」を展開し、地域の自然や文化と出会うリアルな探究体験を届けている。

自らもがん闘病の中で“今を生きる問い”と向き合いながら、教材開発や社会起業へと挑戦中。教育を社会インフラとして広げることをビジョンに掲げ、子どもたちに“わたしを生きる力”を届けるための実践を重ねている。

【資格・活動】
日本モンテッソーリ教育総合研究所認定 3-6歳教師
保育士
日本野菜ソムリエ協会認定 野菜ソムリエプロ

Mariko Kuwabara
Montessori-based / Japan
Learning starts with “ん?” not “Aha!”

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