23年5月 対話力の育み方

私は、モンテッソーリアンとしてだけでなく、哲学対話のファシリテーターとしても活動しております。

今回は、ファシリテーターという視点で・・・
幼児期から児童期にかけての対話力の育み方についてお話させていただきます。

※ことば獲得段階(2歳ごろまで)のお子さまとの関わり方についてはこちら

話しことばの獲得から対話への発展

ことばには2つの役割があります。

    1. 知性を使って考えるための道具
    2. 誰かと相互に理解しあうための道具

    ことばの発達という観点で整理すると、
    まずは、ものの名前から覚えていき、二語文、三語文、多語文と増えていきます。

    目の前の「今」のことだけでなく、
    少し前のことを思い出してことばにできるようになるのが
    意識的な活動が優位になる、2歳半から3歳ごろと言われています。

    徐々に、原因と結果の区別できるようになり、
    「それから」「そして」など、接続詞を使い、
    文と文を繋げて話すようにもなります。

    そして3歳前後には、
    「なんで?」『どうして?」など、
    理由を問うような発話が増えてきます。

    それまで、思考するための材料としての「ことば」
    を獲得して語彙を増やしてきたのが、

    いよいよ「コミュニケーション」のための「ことば」
    へと成熟し始めた姿が、
    「なんで?」「どうして?」
    という問いの形になって現れているのではないでしょうか。

    お互いの立場や意見の違いを理解し、すり合わせるために
    ことばによって考えを伝えあうことが対話です。
    私は、この頃からが「対話」の始まりではないかと考えています。

    とはいえ、3〜4歳でいきなり
    お互いの立場や意見の違いを理解できるようにはなりません。

    まずは、日常生活におけることばのやり取りを積み重ね、
    徐々に「伝えあう力」を養っていくものです。

    幼児期は対話を楽しむ基礎固めを

    幼児期の子どもたちにとって、
    日常生活の中で出会うことのほとんどが発見の連続です。

    まずは、体験を伴う活動から刺激を受け、
    体験そのものや、体験から感じたこと、
    浮かんできたイメージなどを
    言語化することを楽しむことが大切です。

    「ことば」を使った「思考」が活発になるのは6歳ごろと言われています。
    最初のうちは、
    自分の考えたことを
    言語化することに夢中になることも多く、
    他の子の意見に耳を傾けて考えること
    ができるようになるまでにも時間が必要です。

    自分の話を最後まで聞いてもらえた
    という経験を重ねていると、
    自然と他の人の話にも意識が向けられるようになってくるものです。

    お子さま自身がなかなか話を聞いてくれないなと感じるときこそ、
    その子の話をじっくり聞いてみてください。

    大人が関わるスタンスにも変化を

    お子さまがことばを発する前から
    コミュニケーションは始まっています。

    ただ、大人の関わり方や意識の持ち方は、
    少しずつ変化してくるのではないでしょうか。

    最初のうちは一方通行に感じるかもしれませんが、
    乳児のうちから、
    私たち大人が語りかけること全てを無意識に吸収しています。

    声のトーン、スピード、イントネーション
    などの基礎になる時期なので、
    「どうせ理解していない」などと思わずに、
    たくさんお話をしていただきたい時期です。

    お子さま自身が言葉を発するようになってからは、
    言葉のキャッチボールを楽しんだり、
    新たな言葉を紹介するステージに移行します。

    この時期は、
    親子共にコミュニケーションを楽しめる時期かもしれません。

    一方で、イメージしたことがうまく伝わらなくて、
    お子さま自身が癇癪を起こしたりして、
    悶々としてしまうことも増えてきます。

    言語化のサポートも、大人の大切な役割となる時期です。

    日常会話の基礎がほぼ出来上がる4歳を過ぎた辺りから、
    おしゃべりはどんどん活発になってきます。

    「なんで?」「どうして?」と興味を持つことも、より複雑になってきます。
    場合によっては、
    大人にも本当のところ分からないような問いを持つことだって出てきます。

    どうぞ「教えてあげなきゃ」と捉えず、
    一緒に考えたり、調べたりしてみてください。

    大人が正解を持っているとは限らない
    と知ることも大切なことだと思います。

    就学前後になると、
    科学的だったり、哲学的だったりという問いが
    次から次へと溢れ出してきます。

    例えば・・・
    「どうして宇宙ができたの?」

    長い歴史の中で多くの科学者が
    「こうだろう」という説を構築してきたものの、
    誰も宇宙ができる瞬間を見た人はいません。

    ただ、主流の学説を伝えるだけだと
    それが唯一無二の正解だ
    と感じてしまうかもしれませんよね。
    それではもったいないように思うのです。

    いくつかの図鑑を見比べてみたりしながら
    「本当にそうなのかな?」
    ということを一緒に考えてみてもよいかもしれません。

    大人になると、
    早く「正解」に導くことがよいこと
    のように考えがちです。

    でも、正解を与えることよりも、
    一緒にたくさん寄り道をしながら、
    あーでもない、こーでもないと、
    対話をしながら考える時間こそが大切なのではないかと思います。

    ぜひご家庭では、
    寄り道だらけの対話を楽しんでいただきたいと思っております。

    きっと、多角的視点で対話を楽しむことができるようになるはずです。

    プロフィール

    ママヴィまなびのキ 代表|桑原 眞理子

    1977年生まれ、東京都八王子市出身。
    工学院大学 工学部 応用科学科卒。

    企業での商品開発・マーケティングに17年間従事し、暮らしに寄り添う価値づくりを追求する中で、子どもたちの自由な発想と出会い、「子どもの力を社会に届けたい」と強く感じ、教育の道へ。
    モンテッソーリ教育を学び、2019年より東京都府中市にてモンテッソーリ教室「マヴィのおうち」を主宰。保育士資格と実践経験を活かし、家庭教育支援と探究的な学びの場づくりを行ってきた。

    現在は、「五感をひらく暮らし」と「問いを育む学び」をかけ合わせた「古民家留学こどもMBA」を展開し、地域の自然や文化と出会うリアルな探究体験を届けている。

    自らもがん闘病の中で“今を生きる問い”と向き合いながら、教材開発や社会起業へと挑戦中。教育を社会インフラとして広げることをビジョンに掲げ、子どもたちに“わたしを生きる力”を届けるための実践を重ねている。

    【資格・活動】
    日本モンテッソーリ教育総合研究所認定 3-6歳教師
    保育士
    日本野菜ソムリエ協会認定 野菜ソムリエプロ

    Mariko Kuwabara
    Montessori-based / Japan
    Learning starts with “ん?” not “Aha!”

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