2022年12月の台所モンテコラム

★2022年12月1日★

「人類の歴史」に学ぶ子どもの成長

「エレメンタリー探究クラス」の下期テーマは「人類のはじまり」「文字のものがたり」「数字のものがたり」です。
まずは、人類の起源をたどり、手の発達から始まって、自分たちで道具を開発・改良していくプロセスをたどりました。そして、自分たちのタイムラインづくりを通して、時間の流れを見える化する方法を体験しました。

児童期に入ると、頭の中でものごとを整理することができるようになっていきます。

そして、彼ら自身から溢れ出す様々な「問い」は、学びのエネルギーそのものです。
エレメンタリーの子どもたちから、私自身が学んだことは
幼児期の子どもたちとの向き合い方にも通ずるものがあると思いました。
今回は、そういった視点でお話させていただきます。

モンテッソーリ教育のエレメンタリーで最初にご紹介する「5つのグレートストーリー」。

現在取り組んでいる第3のグレートストーリー「人類のはじまり」では、
人類が長い長い時間をかけて地球上で暮らし、繁栄してきた歴史と向き合っています。

人類は何もない自然の中で生き抜くために何が必要かを理解し、
それらのニーズに対処する方法を学び、受け継がれてきたと考えられています。

現在の人間と、当時の人間の共有のニーズを探りながら、
周りには自然に与えられたものしかない はるか昔の世界について
エレメンタリーの子ども達と一緒に想像をめぐらせました。

「自然の植物を採取していた人間が、自分たちで種を撒いて育てようと思ったのはなぜだろう?」

「もしかしたら、誰かがうっかり種をばら撒いてしまったのかもしれない。」
「それを全部拾いきれずにいたら、芽が出てきたことに気づいたのかもしれない。」
「それを観察したら、自分たちでも植物を育てられると気づいたのかもしれない。」

「種をばら撒いた時は失敗したと思っただろうけれど、
 ばら撒かなかったら、植物を育てることに気づけなかったのかもしれない・・・」

そんな話をしました。


「失敗した方が、新しいことに気づけるのかもしれないね。
 でも、気づいた人すごいよね!」
そんなことをレッスン後に熱く語ってくれた子がいました。

日常の些細なやり取りからも
彼らの内側から、先人への感謝の気持ちが芽生えていることを感じます。

初期の人間が必要だと考えた最も重要なことの1つは、互いに通信する方法でした。
第4のグレートストーリーである「文字のものがたり」では、その方法の歴史を紐解いていきます。

最初は音と身振りで、次に絵を描き、最後に言葉を通して、多くのコミュニケーション方法を発明したと言われています。

「人類が一番最初に発した言語は何だったのでしょうか?」
そんな問いを投げかけると、あーでもない、こーでもない
想像を巡らせることを楽しみ始めるのが児童期です。


人類は、長い時間をかけて、コミュニケーションを円滑にするために共通の言語を作りました。
さらに、それを記録するために、古代文明では「文字」が開発されたといわれています。

そして、幼児期の敏感期も、歴史の流れと同じ順序でやってきます。
まず、先人が作った共通のコミュニケーション手段である「ことば」を話せるようになり、
それを記録するための「文字」への興味が芽生えていきます。

「話しことばの敏感期」も、「書きことばの敏感期」も、
先人が築いてきた歴史の上に成り立っているのですね。

日本に文字(漢字)が伝来したのは4世紀ごろだと言われています。
それから、ひらがなやカタカナが開発され、一般化されてきました。
私たちは、長い歴史の中で築き上げられてきたものを受け継いでいるのです。

前例や正攻法に頼れない、不確実性の時代と言われて久しい昨今。
先人が、たくさん失敗を繰り返し、試行錯誤をしながら築き上げられてきたものは
これからも試行錯誤を繰り返しながら次の時代に引き継いていけるとよいですね。

それぞれが、それぞれの答えを導くことができるように
自分で考え、他人と対話し、それを踏まえてまた自分で考える・・・
そんなサイクルを作り出すことが大切なのではないかと思います。

自分で考えること、他人の言葉に耳を傾けること、
そのための土台は、幼児期に築かれます。

なかなか思うようにいかない経験、
できるようになりたくて何度も繰り返す経験、
試行錯誤の末に、自分でできた!という経験、
誤りに自分で気づき、自分で訂正する経験・・・
すべては、子どもの内側から湧き上がるエネルギーから始まります。

大人が意識すべきことは、
「よかれと思って邪魔をしないこと」なのかもしれません。

時間経過の表現方法のひとつとして、ひとりひとりが自分のタイムラインをつくっています。