2022年10月 児童期に主体的に学ぶ意欲を育むための幼児期の過ごし方

今年から、主にキンダークラスを卒業した小学校低学年を対象とした「エレメンタリー探究クラス」のトライアルを実施しています。

先日、上期の探究発表会を開催いたしました。
それぞれが、自分の興味のあることについて自分のペースで調べ、ものづくりを楽しみ、必要に応じて協力し合っている姿に、幼児期以降のの大きな成長を感じました。
そんなキラキラ眩しい彼らを見ていると、幼児期の過ごし方が今の学び方につながっていることを思い知らされます。

そこで今回は「児童期に主体的に学ぶ意欲を育むための幼児期の過ごし方」についてお話しさせていただきます。

幼児期に学び方を獲得する

モンテッソーリ教育では、
幼児期の子どもは「感覚を通して動きながら学ぶ」
と考えられています。

生まれてからしばらくは、
目の前の世界に広がるあらゆる事柄は全て新鮮で、
ありとあらゆる情報に囲まれたカオスな環境の中で暮らしています。

その頃ガイドとなってくれるのが「敏感期」と呼ばれる、幼児期特有の感受性でした。

「敏感期」のおかげで、本能的にプログラムされた
「今の自分に必要な情報」に吸い寄せられていきます。
そこで出会った感覚印象は、
感覚器官を通して脳に伝えられ、
脳から運動の指令が出されて活動につながっていきます。

自由に歩き回る前の乳児期は、
どちらかというと「動き」そのものを獲得することに夢中になっていました。

座る、立つ、歩く、握る、落とす、投げるなど、
大きな運動が自分の意志どおりにできるように、
何度も何度も繰り返しチャレンジしながら、
自分の身体の使い方を学んでいます。

それと同時に、あらゆる情報を無意識に、
無差別に吸収して溜め込んできました。

自然の中で、ぽかぽかな太陽の日差しを浴びて、
秋の風を感じ、
虫の音を聞きながら過ごしているだけでも、
たくさんの感覚刺激を溜め込むことができるのです。

モンテッソーリ教育の環境の中で
幼児期を過ごしている子どもたちは
「敏感期」に導かれて、
自分の意志で環境から学ぶ経験をたくさんしています。

「なぜだろう?」
「自分もやってみたい!」
「どうしたら自分でできるのだろう?」
という興味をきっかけに、
それを見て学び、繰り返し実践して体得することに夢中になってきました。

そうして、自分の意志通りに動く身体と、
目の前の環境から学ぶ意欲を育んでいるのです。

ドリルやプリントより大切なこと

本屋さんの「ドリル教材」コーナーに行くと、
2歳ごろからの幼児期を対象としたものが所狭しと並んでいますね。

ドリル学習は、
知識や技能を習得するための反復練習という学び方です。

幼児向けのドリルは、
シール貼りや、工作、文字を書くことなど、
手しごとが好きな子にとっては便利な一方で、
使い方を間違えてしまうと、
学ぶ意欲を阻害することにも繋がりかねません。

元々、幼児は
「もう1回。もう1回・・・」
と何度も同じことを繰り返す傾向にありますが、
それはその子の内側から沸き起こるエネルギーに導かれてこそです。

文字の敏感期のお子さまにとって、
ひらがなドリルはおもちゃで遊ぶことよりも魅力的なこともしばしばなのですが…

「ひらがなが書けるようになるために、
 1日1ページ取り組ませる」
などとノルマになってしまうと、途端に逆効果です。

受動的な学びと、能動的な学びの違い

恐らく、私を含めた多くの大人が受けてきた教育は、
各学年のカリキュラムに則って、
教師から与えられるものでした。

そこには、決められた正解が用意されていたので、
学ぶ目的は正解にたどり着くことだったように思います。

テストでよい点数を取って、
よい成績を残すための勉強は、
少なくとも私にとってはあまり面白いものではありませんでした。

それでも、成績がよければ褒められるし、
喜んでもらえることは嬉しくて、
それなりに熟してきたのではないでしょうか?

これが、受動的な学びの現実です。
一方で、能動的に学ぶとはどういうことでしょうか?

「なぜだろう?」
「自分もやってみたい!」
「どうしたら自分でできるのだろう?」
という気持ちから始まった学びは、試行錯誤の連続で、
遠回りもします。
うまく行かなくて、
行き詰まってしまうこともあるかもしれません。

それでも、自分の興味・関心からスタートしていれば、
そのプロセス全てが楽しくて仕方のない時間に感じられるのです。

受動的な学びに慣れてしまうと、
与えてもらうのが当たり前になり、
自分から学びに行く術を見失ってしまいます。

不確実な時代と言われる今求められているのは、
能動的に学ぶ力
ではないでしょうか。

幼児期に大切にしたいこと

幼児期は、
お子さま自身の内側から湧き上がる
興味関心に導かれた活動を、
とことんやり切る経験を大切にしたい時期です。

ともすると、
大人の視点では「くだらない」と感じること
に夢中になるかもしれません。

でも、なぜ「くだらない」のでしょうか?
何が「くだらない」のでしょうか?
それは、大人の勝手な思い込みであることがほとんどです。

また、いつまでも同じことを繰り返していると、
違うことにもチャレンジして欲しいと感じてしまうかもしれませんね。

でも、それも大人の勝手な思い込みです。

幼児期にモンテッソーリ教育を受けていた藤井翔太棋士も、
当時、毎日何個もハートバッグを作り続けたというのは有名なお話です。
幼児期こそ、自分の意志で活動を選択し、
活動を終えるタイミングも自分で決める経験を大切にしたいものです。

大人の勝手な思い込みで、
お子さまの意欲を踏み躙ってしまうことだけは避けたいですね。

プロフィール

ママヴィ 代表|桑原 眞理子

大学卒業後、食品メーカーを中心に商品開発·マーケティング職に従事。
「こども哲学」との出会いをきっかけに子どもの斬新な発想に魅せられ、子どもの力を社会に届けたいという想いからモンテッソーリ教育を学ぶ。
子どものマーケティング思考を育む6歳からの体験型キャリア教育プログラム「こどもマーケター入門」を開発し、ワークショップ等を開催。現在は「モンテッソーリ教室 マヴィのおうち」を拠点に、マーケティング思考で自ら変化を起こすチカラを育む環境づくりに取り組む。
・日本モンテッソーリ教育総合研究所認定 3-6歳教師
・保育士
・NPO法人こども哲学 おとな哲学 アーダコーダ 理事(哲学対話ファシリテーター)
・日本野菜ソムリエ協会認定 野菜ソムリエプロ

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