幼児期後半のお子さまに対して、ついつい周りの子と比較して一喜一憂してしまいがちなのは、読み書きの発達ではないかと思います。
周りの子より早いと安心するし、ゆっくりペースだと不安になってしまう…
今回は、それぞれのタイミングでやってくる「書きことばの敏感期」を、周りを気にせず見守るために知っていただきたいことをお話します。
「文字」という抽象的な世界
モンテッソーリ教育では、
幼児期には吸収の精神が宿っているので、
無意識でも、環境からあらゆる情報を吸収する
と考えられています。
日頃から触れ合う機会が多いと、
文字への興味は早く訪れるかもしれません。
文字が読めるということは、
記号を音に変換し、
その音だけでもののイメージができるということ
抽象化された世界に、足を踏み入れるということです。
モンテッソーリ教育では、
幼児期は具体的な活動を重視しています。
それは、具体的な世界から送られてくる
様々な感覚刺激を脳でキャッチして、
活動(運動)でアウトプットするというサイクルを
たくさん繰り返すためです。
文字に興味を持つこと自体は自然なことなのですが、
もし、早くから抽象的な世界に興味を持ってしまって
具体的な活動に興味が向かないことがあるとすれば…
とてももったいないことではないかと思うのです。
幼児期に訪れる「運動の敏感期」は、
具体的な世界での活動を支える屋台骨です。
具体的な世界で様々な感覚体験を積むことが、
抽象的な世界で活動する準備にもなります。
文字への興味がなかなか訪れないからといって、
過度に心配する必要はないのです。
「読む」よりも「書く」が先行する
モンテッソーリ教育では、
文字の発達について
「読む」よりも「書く」が先行すると考えられています。
これには二つの意味があります。
まずは、「読む」ということの意味の捉え方にあります。
文字の形を見て音に変換することができたとしても、
それが何かをイメージできなければ読めたとは言えません。
例えば、「りんご」という文字を見て、
「り・ん・ご」と声に出すことができても、
赤い皮の丸い果物
がイメージできていなければ、それは読めるとは言わないのです。
もう一つの意味は「運動の敏感期」に起因します。
運動の敏感期から
「書きたい」という意欲が湧き上がる時期は、
書きことばの敏感期より早めに来ることが多いからです。
なぞってみたい…手作り文字カード
運動の敏感期の「書きたい」という意欲を
文字につなげるツールとしておすすめなのが、
自分の名前の手作り文字カードです。
A5サイズくらいの用紙にひらがな1文字を印刷して、
文字部にグリッターペンを塗って乾かすと
キラキラな見た目で、ザラザラとした感触の文字カードができます。
五感刺激を楽しみながら、
自分の名前をなぞることを楽しむうちに、
文字を書くことへの意欲が少しずつ芽生え始めるものです。
書くことの敏感期の自然な姿
書きことばの敏感期が始まると、
視界に入るあらゆる文字に興味を持ちます。
覚えた音を声に出して教えてくれたり、
まだ覚えていない音は「これは何て読む?」と質問攻め・・・
なんてこともしばしばだと思います。
知りたい、分かりたい、覚えたい・・・
そういった意欲に従って、文字に惹きつけられていきます。
また、書きたい意欲が芽生え立ての頃は、
なぞり書きを好みます。
この時期は、本人の意欲がある場合は、
プリント教材やドリル教材などの活用も有効です。
でも、決して
書けるようになるための日々のノルマ
は決めないでくださいね。
書きたい時に満足するまで書ける環境を用意することと、
書かせるためのツールを用意することは、
同じものを用意しているにも関わらず、真逆の効果になります。
幼児期に、自分の意志に反して「書かされる」
という経験を繰り返してしまうと、
児童期に入ってからの学ぶ意欲にも影響しかねません。
学ぶことを楽しむためにも、
自分の意志で活動を選択して、
自分のタイミングでやり終える経験を尊重していただくことが大切です。
プロフィール
ママヴィ 代表|桑原 眞理子
大学卒業後、食品メーカーを中心に商品開発·マーケティング職に従事。
「こども哲学」との出会いをきっかけに子どもの斬新な発想に魅せられ、子どもの力を社会に届けたいという想いからモンテッソーリ教育を学ぶ。
子どものマーケティング思考を育む6歳からの体験型キャリア教育プログラム「こどもマーケター入門」を開発し、ワークショップ等を開催。現在は「モンテッソーリ教室 マヴィのおうち」を拠点に、マーケティング思考で自ら変化を起こすチカラを育む環境づくりに取り組む。
・日本モンテッソーリ教育総合研究所認定 3-6歳教師
・保育士
・NPO法人こども哲学 おとな哲学 アーダコーダ 理事(哲学対話ファシリテーター)
・日本野菜ソムリエ協会認定 野菜ソムリエプロ