「スローライフ」や「スローフード」という言葉は一般に認知されていますね。
「スローラーニング」というのはそれらをもじって考えた造語です。
今回は、生活だけでなく、学びのプロセスも
ゆっくり、じっくり、立ち止まるくらいで向き合うことがちょうどよいのでは?というお話です。
小学生の「自由研究」事情に感じた
違和感
夏休み期間のお話になりますが…
ニュースで自由研究の話題が取り上げられていました。
「夏休み!お菓子の空き箱を使った工作」
といった主旨のワークショップで、
低学年くらいの子どもたちが、保護者と一緒に
みんなで同じものを、見本に忠実に作っています。
なかなかのクオリティなのですが、
出来上がりは、みんなほとんど一緒です。
参加していた親子は、
そのクオリティの高さに大満足!
自由研究も完成して一安心
それを観て、
発想力も、オリジナリティも、開発力も育たないな…
なんて感じてしまいました。
自由研究は、
自分の内側から湧き上がる興味・関心から出発し
その試行錯誤のプロセスにこそ意味があるものだと思います。
アウトプットのクオリティなんて、
二の次でよいのではないでしょうか?
どんなに拙くても、
自分で考え、まとめ上げたものには
思い入れがあります。愛着が湧きます。
それで充分ではないのでしょうか?
発想力・オリジナリティ・開発力は
これからの時代に必要な力と言われているのに、
今の世の中で喜ばれるのは、
なぜ、それとは真逆のことなのでしょうか?
プロセスを大切にする子ども、
結果を求める大人
「大人」と「子ども」の違いを考えるときに
大人は結果を大切にし、
子どもはプロセスを大切にしている
と紹介することがあります。
結果を求めれば、
「うまく」できることがゴールになります。
でも「うまく」の基準って曖昧なもので、
成長と共に経験を重ねながら
それぞれが作り上げていくものではないでしょうか。
だから、経験が少ない子どもたちは
「結果」は気にしないのだと思います。
「うまく」できることではなく、
「自分で」できるようになりたいのです。
そのためなら、何度だってチャレンジします。
当然、「自分で」できるまでのプロセスは
うまくいかないことだらけです。
同じことを繰り返すプロセスの中で、
新しい発見があったり、検証したり、調整したり、
実はたくさんの挑戦をしています。
それが楽しいのです。
幼児期後期がターニングポイント?
幼児期に「プロセス」を楽しむ経験をとことん堪能してきた子は、
児童期に入ると、幼児期とは違った形で
学びのプロセスを楽しみ続けることができています。
一方で
幼児期に大人から「結果」を求められてきた子は、
早い段階で「結果」を求め始めるようになっているような気がしてなりません。
それが加速していった先に、
「効率」ばかり重視して、
正しい結果まで導いてくれるマニュアルがないと動けない姿
があるのではないかと思うのです。
前者は、遠回りをしながらも
自分で考えて、学びを構築することを楽しめる
のに対して、
後者は、学ぶことを楽しめずに受け身です。
幼児期後期 4-6歳くらいになると、
日常の基本的なことは1人でできるようになってきます。
そして、
それくらいから「結果」も意識し始めているような気がしています。
この時期に「結果」ばかりを求められたら
「うまく」できることがよいことなのだ
と感じるでしょう。
そうやって、プロセスがなおざりにされていき
プロセスを楽しむ経験が奪われてしまうのは、
残念でなりません。
「スローラーニング」な意識改革を
子どもが何かのスキルを獲得することについて、
年齢の平均的なレベルを指標にしたくなるのは
自然なことです。
でも、ペースは人それぞれ。
できないことを
大人がやらせてできるようにさせるのではなく
間違えていることを
大人が指摘して正すのではなく
自分から動き出すのを待ち、
自分で誤りに気づくのを待つことが大人の役割です。
もし、自分から動き出さないのであれば
何か理由があるはずです。
少し難易度を下げてみたら
興味が湧いてくるのかもしれません。
大人が楽しく取り組んでいる姿を見せたら
興味が湧いてくるのかもしれません。
そもそも、今は
全く別のことに興味があるのかもしれません。
自分から興味を持って取り組んでいるときは、
間違いを指摘せず、そっと見守ってみてください。
誰かの手を借りたいときは、
自分から助けを求めてくるものです。
変な癖がつかないうちに正してあげたいとか、
早くコツを掴ませてあげたいとか、
勝手な思い込みで、
プロセスを楽しむ邪魔をしてはいけません。
恐らく、子どもたちは
自然に「スローラーニング」を楽しんでいます。
見守ること、待つことは、
大人にとっては、なかなかの試練です。
私たち大人こそ、
子どもたちから学ばせてもらう立場なのかもしれません。
プロフィール

ママヴィまなびのキ 代表|桑原 眞理子
1977年生まれ、東京都八王子市出身。
工学院大学 工学部 応用科学科卒。
企業での商品開発・マーケティングに17年間従事し、暮らしに寄り添う価値づくりを追求する中で、子どもたちの自由な発想と出会い、「子どもの力を社会に届けたい」と強く感じ、教育の道へ。
モンテッソーリ教育を学び、2019年より東京都府中市にてモンテッソーリ教室「マヴィのおうち」を主宰。保育士資格と実践経験を活かし、家庭教育支援と探究的な学びの場づくりを行ってきた。
現在は、「五感をひらく暮らし」と「問いを育む学び」をかけ合わせた「古民家留学こどもMBA」を展開し、地域の自然や文化と出会うリアルな探究体験を届けている。
自らもがん闘病の中で“今を生きる問い”と向き合いながら、教材開発や社会起業へと挑戦中。教育を社会インフラとして広げることをビジョンに掲げ、子どもたちに“わたしを生きる力”を届けるための実践を重ねている。
【資格・活動】
日本モンテッソーリ教育総合研究所認定 3-6歳教師
保育士
日本野菜ソムリエ協会認定 野菜ソムリエプロ
Mariko Kuwabara
Montessori-based / Japan
Learning starts with “ん?” not “Aha!”
