2021年10月の台所モンテコラム

★2021年10月1日★

旬素材のチカラを借りた学びのヒント

食材の旬とは、その食材が最も美味しく、栄養価も高く、たくさん出回る時期を言いますね。旬に触れると、自然のめぐみや四季の変化を感じることができます。
「食欲の秋」「文化の秋」というように、食を通じて日本の文化に親しみやすい季節が今年もやってきました!
幼児期から素材に触れ、調理に参加し、親子での対話を楽しんでいただけたらと思っております。

秋に旬を迎えるきのこですが、特徴的な食感や香りに苦手意識を持っているお子さまは多いものです。
そんなきのこの中で、味のクセが少なく、食べやすいのが「舞茸」です。自分で調理した「舞茸」のお料理であれば、きのこ嫌いのお子さまでも食べてくれる可能性が高まるのではないでしょうか。
きのこは手で裂いてこそ美味しさを発揮する食材です。
この「手で裂く」操作は2歳ごろのお子さまの握力でもやりやすいので、お子さまの役割としてお手伝いをお願いしやすい食材でもあるのです。
裂き方をゆっくり見せたら、あとはお任せしてみましょう。ひたすら裂いて、形がなくなるくらい細かくしてしまうかもしれません。それくらい、手を使いたいんです。そんな時は、炊き込みごはんなどの具材にすると、サイズは気にならないと思いますよ。
<栗ときのこの炊き込みごはんをつくるおしごと 動画>

日本人にとって主食として親しまれているお米の収穫も秋ですね。

「新米」は、秋に収穫してその年の12月31日までに精米され、包装されたお米のことを言います。(食品表示基準に基づく)

小さい頃、祖父母から言われた「お米はお百姓さんが汗水垂らしてつくってくださったのだから、一粒残らずいただかないといけないよ」という言葉は、私の食に対する意識の基盤となりました。

おちゃわんがぴっかぴかになるまで綺麗に食べ切れたことは、今でも多くのお子さまたちの自慢になっています。素敵な日本の食文化が、しっかりと伝承されていることを感じますね。

ところで、農耕民族である日本人には、自然のめぐみに感謝を込めて「いただきます」という挨拶を言ってから食べる習慣があります。この「いただきます」とまったく同じ意味の言葉は、外国のどこにも見当たらないってご存知ですか?

これからのグローバル社会で生きる子どもたちに求められるのは、自国の文化を受容・伝承する力を土台に、新たな文化を創造することだと思います。

目の前の「米」という食材が辿ってきたプロセスに思いを馳せる文化は、幼児期から子どもたちに継承していきたいですね!

対話を広辞苑で引いてみると「向かい合って話すこと。相対して話すこと。二人の人がことばを交わすこと。会話。対談。」と定義されています。
言葉を獲得し、自分の言いたいことや考えたことを言語化して表現すること、相手の話を聞くこと、聞いた上で考えを広げたり深めていくことを一歩一歩、少しずつ獲得しているのが幼児期です。ですから、広辞苑に載っているような対話をお勧めしている訳ではありません。
言語獲得段階のお子さまには「これは、りんごです」などものの名前をお伝えしながら、まずは本物の調理前の食材に触れ合う機会をたくさん作っていただきたいです。
そして、色や形(視覚)・香り(嗅覚)・味わい(味覚)・肌触り(触覚)・調理音(聴覚)・重さ(固有覚)など、様々な感覚刺激を手軽に楽しむことができるのも食材のよいところ。触れ合うからこそ、「赤いね」「丸いね」「大きいね」「甘いね」など形容詞もごく自然に体験を通してお伝えできるのです。

また、スーパーでお買い物をしているときにも、生鮮食品売り場の変化で季節を感じることもができますね。「栗が売っているわ。秋が来たね。」といった何気ない会話から、親子のコミュニケーションを楽しんでいただけるのではないでしょうか。

ここで気をつけていただきたいのは、お子さまの語彙を豊かにするためにとか、対話力を高めるためにという目的で対話をしないことです。お子さまの興味・関心を起点に、楽しみながらコミュニケーションを取ることで、自然に対話力は育まれるものです。幼児期に話をしっかり聞いてもらえた経験は、相手の話に耳を傾けることにつながります。

10月台所モンテコラム