子どもの自主性を尊重するには、大人の「見守る」姿勢が大切ですね。
「見守る」とは、お子さまの「今」をよく観察して、発達に応じた距離感でサポートすることだと考えています。
今回は、その指標となる5つのお話です。
「上から下」「内から外」の法則
見守る前に知っておきたいことは、発達の順番です。
「この子は今どの段階にいるのか」を知らないことが、
手出し口出しの原因になっていることも少なくありません。
「上から下」とは
これはイメージしやすい順序ではないでしょうか。
生まれてすぐに歩くことはできませんよね。
首が座り、腰が座り、
脚で立つことができるようになっていないと、
自由に歩き回ることはできません。
一方で・・・
「内から外」とは
微細運動につながる手の発達は、
内側から外側に向かって進んでいきます。
肩→肘→手首→手指 の順番で安定し、
細かな操作ができるようになるのです。
具体的には、
ひたすら肩を使って「投げる」ことを好む時期
↓
両手で重いものを持って肘で支えて
「運ぶ」ことを好む時期
↓
手首を捻って「蓋を開け」たり、
「注ぐ」ことを好む時期
↓
手首を固定して指先を使った細かな操作を好む時期
肩や肘が安定していないお子さまに、
鉛筆やお箸を正しく持たせようとしてもできないのはそのためです。
でも、
この順序を意識せずに一喜一憂してしまうことは
意外と多いのではないでしょうか。
スプーンでご飯を食べる前段階として手づかみで食べたがっているのに、
スプーンを使わせようとしてもうまくいかないのは、
順序を見失っているからなのです。
活動の主役は子ども自身
「見守る」大人にとって一番大切と言っても過言ではないのが、
「大人が必要だと思うことを、できるようにさせる」
のではなく、
「お子さまがやりたいことを、できるように導く」姿勢です。
とはいえ、
○歳までに、~ができるようになって欲しい
という親心は、決してエゴではないと思います。
是非、そんな感情も否定しないでくださいね。
何かができるようになって欲しいと感じていらっしゃるのなら、
その意識をご自身に向けてみてはいかがでしょうか?
お子さまにできるようになって欲しいことを、ご自身が意識して取り組むのです。
- 誰に見られても恥ずかしくない、
美しい所作だと自信を持っていえますか? - 楽しく取り組めていますか?
イキイキと美しい所作を目の当たりにすることで、
お子さまに興味が芽生えるかもしれません。
「鉤の手(かぎのて)の原理」
「鉤の手」とは、
ピーターパンのフック船長の片手
をイメージいただくと分かりやすいと思います。
若しくは、
かぎ針編みをイメージいただいてもよいかもしれません。
あの「鉤」で引っ掛けて次に進めていくように、
目の前の活動を、次の段階に繋げて考えていくことを
「鉤の手の原理」といいます。
例えば、鉛筆を正しく持つ前段階として、
どのような操作をしてきたでしょうか。
まず自分の手の存在に気づき、
次第に自分の意志で掴んで離すことができるようになります。
親指・人さし指・中指の3本の操作ができるようになってくると、
次第に薬指・小指の2本は
3本指の操作を支えて安定させるように分化してきます。
それぞれの指の力加減をコントロールできるようになって初めて、
鉛筆を正しく持つことができるようになります。
鉛筆を持つことだけが、文字を書くことの準備ではないということですね。
自分でやりたがらない理由
「自分のことは自分でやりたい」
という意欲に満ちているのが幼児期と言われています。
でも、その意欲が感じられないとしたら・・・
なぜでしょうか?
環境設定という視点から、原因と対応を考えてみましょう。
<人的環境>
- 「汚すから」「危ないから」「遅いから」という理由で、
何でも大人に代行してもらうことに慣れてしまうと、
「自分でする」意欲は萎んでいきます。
→小さなことから、
自分でする機会をつくっていくことが必要ですね。 - 「自分でできる!」という結果を求められすぎると、
できない自分を受け入れられず、
チャレンジすることに不安を感じてしまいます。
→今できていることに目を向け、
時には横から声援を送ることも必要かもしれません。 - もっと甘えたいという感情の現れかもしれません。
→ぎゅっと抱きしめたり、
二人だけの時間を増やすだけで落ち着くかもしれません。
<物的環境>
- 周りの情報量が多すぎて、
処理しきれずにやりたいことが見つけられていないこともあります。
→環境の中の情報を、
今の好みを起点にチャレンジしやすいように整理してみましょう。
できるまでのプロセスが大事
大人になると、
「~ができる」という結果に意識が向きがちですね。
でも今できないことが、
ある日突然できるようになるということはありません。
お子さま自身の内側から湧き出る
「やってみたい!」という意欲が起点となり、
うまくできない段階も経て、少しずつできるようになっていきます。
だからこそ、「やってみたい!」ことが何かに目を向けます。
うまくできない段階の試行錯誤には手出し口出しせず、
挫けそうなときはうまくできない原因を見つけて援助し、
自分でできるように導いていくのです。
大学卒業後、食品メーカーを中心に商品開発·マーケティング職に従事。プロフィール
ママヴィ 代表|桑原 眞理子
「こども哲学」との出会いをきっかけに子どもの斬新な発想に魅せられ、子どもの力を社会に届けたいという想いからモンテッソーリ教育を学ぶ。
子どものマーケティング思考を育む6歳からの体験型キャリア教育プログラム「こどもマーケター入門」を開発し、ワークショップ等を開催。現在は「モンテッソーリ教室 マヴィのおうち」を拠点に、マーケティング思考で自ら変化を起こすチカラを育む環境づくりに取り組む。
・日本モンテッソーリ教育総合研究所認定 3-6歳教師
・保育士
・NPO法人こども哲学 おとな哲学 アーダコーダ 理事(哲学対話ファシリテーター)
・日本野菜ソムリエ協会認定 野菜ソムリエプロ