昨年7月から、ゆりさんに「ながらモンテという名の我が子の観察」というタイトルのコラムを毎月執筆いただいております。
幼児期前期の日常から「母」という立場で感じる戸惑いや葛藤、アイデアなどを通して、お子さまと向き合う大人にとって、自身の「子育て哲学」を考えるきっかけとなるようなお話をご提供いただいてきました。
「モンテ教師」と「保護者」の視点は違って当然です。
でも、私たちは「観察」という共通のキーワードで、モンテッソーリ教育を見つめてきました。
今回は「子どもを観察する」ということについて今一度考えてみたいと思います。
「おうち」と「お教室」の違い
お子さまにとって、保護者の皆さまがいる「おうち」は
甘えることができる安心な場所、
外で冒険してきた自分を癒し、温かく送り出してくれる安全基地です。
家族みんなで快適に暮らす空間です。
一方で、お教室は子どもが主役。
主体的に生きる力を学べるように、
子どもサイズに整えられた環境を用意しています。
もちろん、
お教室の環境を「おうち」に応用することはできます。
でも「おうち」をお教室のようにすべきなのでしょうか?
おうちで
「子どもが主役」になれる環境とは
まだ小さなうちから、自分の人生の主役になって
自分の発達課題と向き合い、取り組んでいます。
それが「自己教育力」です。
その力を発揮するためには、次の5つの環境を用意することが大切です。
- 自分で活動を選ぶことができる環境
- 自分のペースで活動を楽しめる環境
- 自分のタイミングで活動を終えられる環境
- 自分で間違いに気づける環境
- 間違いを自分で訂正できる環境
さて、5つの環境に必要なことは何でしょう?
必ずしも、
子ども最優先でものを揃える必要はないと思いませんか。
ものを揃えるよりも、使い方をやってみせるよりも前に、
「子どもを観察する」ことから
何を準備したらよいかを考えることの方が大切だと思います。
ものを揃えるより大切な
「大人の観察力」
自分で活動を選ぶために、
どんなことを観察したらよいのでしょうか。
お子さまは、そのお道具の使い方を知っていますか?
知らないから選択しないのであれば、
使い方を伝えることが大切ですね。
ものの数が多すぎて、
迷って選べないことはないでしょうか?
今迷わない数はどのくらいでしょう?
一つ一つ整理していくと、
お子さまが自分で活動を選ぶことができるようになっていくはずです。
では、自分のペースで楽しみ、
自分のタイミングで活動を終える環境をつくるために
どんなことを観察したらよいのでしょうか。
せっかくやってみようと思って手を伸ばしたのに、
横から手出し口出しされたときのことを考えてみてください。
よかれと思って手出し口出しすることは、
やる気を削いでしまうリスクがあることを理解して様子を見てみましょう。
これをできるようになって欲しい。集中して欲しい。
それは大人の都合です。
目の前のこの子が
できるようになりたいことは何でしょうか?
思うようにできずに困っていることは何でしょうか?
大人からすると ものすごく小さなことに気づいて感動したり、
ものすごく小さなことで苦戦したり、
ものすごく小さなことに夢中になるものです。
もし、
何もできない、進歩していないと感じているとしたら、
もう少し小さなことに目を向けてみてください。
また、他人に間違いを指摘されるよりも、
自分で気づいて訂正する方が次に繋げやすいと思いませんか?
「それ、間違えている」
と指摘されるところから始まるのと、
自分でやってみて
「何かが変だ・・・?なぜだろう?」
と試行錯誤できるのと、
どちらが次のステップに進みやすいと思いますか?
「試行錯誤のプロセスを大切にされる」経験の中で、
間違えたときに自分で対処する術を学ぶことができます。
自分なりの観察memoをつけてみる
今まで
「ながらモンテという名の我が子の観察」を通して、
ゆりさんの観察memoを
読みものとして公開していただいてきました。
観察memoのメリット
・手出し、口出しする前に、立ち止まって観察することに意識が向けやすい
・お子さまの小さな変化に気づきやすい
・時系列で見ると、大きな成長を感じられる
ご家庭で観察memoを残すなら、
お子さまの「行動・様子」から
楽しんでいるポイント、困難と感じているポイント、
好きな要素などを
簡単に記録しておくだけで十分だと思います。
観察memoフォーマット(A5サイズに出力してご記入ください)
「ながらモンテという名の我が子の観察」の主役
「だんだん」は、
今まで吸収してきたたくさんの事柄を
整理・秩序化する段階へと移行しつつあります。
ゆりさんとは、
そろそろ毎月の連続コラムとしては一区切りつけ、
不定期更新へとシフトしていく予定で検討を進めています。
ひとりひとりの観察memoも、百人いたら百通り。
無理のない範囲で、
変化を楽しんでいただくことが大切だと思っています。
プロフィール
ママヴィ 代表|桑原 眞理子
大学卒業後、食品メーカーを中心に商品開発·マーケティング職に従事。
「こども哲学」との出会いをきっかけに子どもの斬新な発想に魅せられ、子どもの力を社会に届けたいという想いからモンテッソーリ教育を学ぶ。
子どものマーケティング思考を育む6歳からの体験型キャリア教育プログラム「こどもマーケター入門」を開発し、ワークショップ等を開催。現在は「モンテッソーリ教室 マヴィのおうち」を拠点に、マーケティング思考で自ら変化を起こすチカラを育む環境づくりに取り組む。
・日本モンテッソーリ教育総合研究所認定 3-6歳教師
・保育士
・NPO法人こども哲学 おとな哲学 アーダコーダ 理事(哲学対話ファシリテーター)
・日本野菜ソムリエ協会認定 野菜ソムリエプロ